本格的な暑さが始まりました。
つい先週までは、ジャケットを一枚着ていたはずが、
一気に蒸し暑さがやってきました。
さて私は、今年も士幌高原にいます。
この時期は、恒例の小中学生向け自立に向けた
野外体験学習「グロースセミナー」です。
今年はついに30回目。
つまり、30年目のセミナーです。
● 向き合うこと —————————————————————————
現実に向き合うことは、覚悟が必要です。
4泊5日のこのセミナーでは、様々な出来事が起きます。
この体験学習では、起きた出来事に(たとえ不快なことだとしても)
真正面から向き合っていきます。
それも全員で。
今年は、例年になく、低学年がとても多いグロースになりました。
1、2年生だけで10人。
初参加も10名以上。
リピータたちには当たり前のことでも、
初参加や低学年にとっては初めて耳にすることばかりです。
自分で決めろ!
黙っていて、人の意見に賛成するだけじゃ、自分がいないのと同じ!
どんな小さな決定でも、それを自分が決めたということを大切にしろ!
(誰かが忘れ物をしたときに)ほかのみんなも、
この忘れ物に責任がある!自分にできたことは何だ?
などなど
こうやって、否が応でも、
「自分」という存在に、向き合うことになっていくのです。
● どうしたいか? —————————————————————————
こんなことがありました。
テントから起き出した、H君初参加。
みんなでテント撤収をするのですが、ひとりうずくまり泣いています。
スタッフの一人に様子を観にいかせたのですが、状態はそのまま。
10分ほどたってから、私からH君に近づきました。
相変わらず泣いています。
どんな状況でも、私は子どもと視線を合わせて話すことにしています。
泣いていてもいいから立ちなさい、というとちゃんと立ち上がりました。
「何が起きているんだ?」と聞くと、「帰りたい」と言います。
ホームシックにかかる低学年はよくいます。
帰りたい気持ちはよーくわかった。
ただ、帰るにしても、一緒に連れて帰るスタッフがいないこと。
ママに迎えに来てもらうにしても、飛行機を予約してからくるから、
すぐには来れないこと、など事実を伝えました。
そのうえで、
「ママに来てもらって、どんなことを伝えるんだ?
帰りたくなったから、ママを呼んだ?
それとも、帰りたくなったけど、
昨日は一生懸命頑張って、テントに寝たこと?」
実は、別の子どもが「帰りたい」と泣いているの横目で見ながら、
H君は涙をこらえて昨晩は踏ん張ったのです。
「ママが来たら、そのこと絶対に自慢しような」
うなづくH君に私は
「ところで、今日も、仲間たちといろんな実習をすることに
なっているんだけど、それをやめて、帰るってママに言うの?
それとも、みんなと頑張るって言いたいの?」
泣いているH君は、「2番」と即答です。
つまり、みんなと頑張ると言いたいらしい。
「そしたら帰れないけど、いいのかな。
じゃあ、羽田に迎えに来てもらった時に、
帰りたかったから実習はやらなかったと正直に言おうか?
それとも、すごく帰りたかったけど全部やったって言いたいの?」
これも「2番」と即答でした。
突然仲間たちのところに走り寄り、テント撤収の手伝いを始めました。
● 山に登る —————————————————————————
結局、やりたくないと言っていた山登りを、
おそらくチームの中で一番楽しみ、
ついには、彼独自の遊びを自然のなかで見つけたのです。
それは色を探すこと。
大自然には色があふれています。
名前を付けられないような色もあるし、緑も何種類もの緑があります。
かれは、山に登る間だけでも、40以上もの自分で名付けた色を発見しました。
「オレ、これ楽しい。百まで見つける、家に帰ってからも毎日やりたい」
泣きながら帰りたいと言っていたH君はもうどこにもいなくなってしまいました。
H君は、自分と向き合ったのです。
そして、どうにもならない環境の中を生きる力を発揮したというわけです。
正直、私は、毎回グロースで、子どもたちからたくさん学びます。
だからこそ、このグロースは、私にとって貴重な機会なのです。
Mちゃんに聞かれました。
「しばしばのさぁ、好きなことって何?」
私は即答でした。
「グロース!」
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