2023年11月
- miraisozojuku
- 2023年11月3日
- 読了時間: 3分
神無月 そして出雲は大忙しとなる神在月
秋晴れが続きます。
秋と言えば、に続く言葉を、皆さんはどうつなげますか?
最近本棚の整理をしていて、購入したまま
読んでいなかった何冊もの本に出合いました。
いつか読もう、いつかそんな時が来たら、
そういったまま、書棚に置いてけぼりにされていた本たちです。
その中の1冊を手にしてみました。
● 絵本とか、物語りとか
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ボクは40代に入ってから、心理学者である河合隼雄氏の著作に刺激を受けて、
昔話や児童書、ファンタジー文学をよく読むようになりました。
当時河合氏が会長職についていた、小樽の絵本児童文学研究センターの講座にも参加し、
世界中の物語りに触れる機会を得ました。
「大人こそ、絵本やファンタジーに触れるべきである」と
いった言葉も印象的で、のめりこむように次から次に読んだものでした。
ここ数年、専門書を読むことが多く、いわゆる「物語」に触れることには、すっかりご無沙汰でした。
そんななか、置き去りにされていた本たちに出合ったわけです。
このひと月ほどですが、朝の読書を始めました。
「ようやくページを開いてもらえたか」とその本から声が聞こえるような気がします。
そこに置き去りにされていた「物語り」は、私の心に一気に飛び込んでくる感動の物語りばかりでした。
● 朝っぱらから、なみだなみだ 『砂漠で見つけた一冊の絵本』岩波書店
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今読んでいる本は、物語ではないのですが、
柳田邦男さんの『砂漠で見つけた一冊の絵本』岩波書店
自ら命を絶とうとした息子さんの脳死から腎提供までの11日間をつづった手記『犠牲』をご存知の方も多いのではないでしょうか?
柳田氏は悲しみの中「呆然と過ごす日々」が過ぎ、久しぶりに立ち寄った本屋さんで「風の又三郎」のカバー絵にくぎ付けになったのだそうです。
昭和初期の田舎の子どもたちや学校がよみがえり、
「少年時代に降り戻されるような感覚」に陥いり、
「荒涼たる砂漠をさ迷うなかで、突然緑にかこまれたオアシスに出会った感じ」と、書かれています。
柳田さんは、この『砂漠で見つけた一冊の絵本』の中で、ご自身が出合った絵本にかかわる様々な人たちとのかかわりを紹介しています。
一章ずつ読み進めては、朝から涙を何度もぬぐいました。
柳田氏自身が『フランダースの犬』を読み返して、
ただかわいそうなお話だったのではなく、たとえ若くして旅だったとはいえ、ネロは確かに意味のあった人生を生きたことを教えられたり、
中井貴恵さんが3人で始めた『つりばしゆらゆら』絵本の読みきかせが、
多くの喪失体験者たちの心を癒し続けている話、
末期のがんで歩けなくなってしまった一流チェリストが同じくチェリストの息子さんと
最後の演奏会をした際のエピソードなど、
どのページにも、生きている大切で尊い時間と、限りある時間の中で懸命に生きる人たちの物語り、、その姿が描かれています。
● 読み返してみると
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幼い頃に読んだ物語を、おとなになった今読み返すと、全く違う物語りとして迫ってきます。
言い換えれば、あの頃に意味を持たなかった言葉たちや絵が、心に飛び込んでくるのです。
河合隼雄さんが
「宇宙に子供たちが存在することは誰もが知っているけれど、子どもの中に宇宙があることに気付いている大人は少ない」
と言った言葉があったような気がします。
私たちの心の中にも、まだ宇宙が広がっているはず。
秋と言えば、
「思い出の物語りを読む秋」
本屋さんや図書館で、のんびりと時間を過ごしてみてはいかがですか?
それは懐かしさだけではなく、
今のあなたにとって大切で、
もしかすると必要な言葉たちに出会う貴重な時間になるかもしれません。
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