● BPSモデルという考え方
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東日本大震災の時に、全国から多くのボランティアが駆け付けました。
被害が東北全域にわたっていましたので、ボランティアの数も多く、これを読んでいただいている方の中にも現地に入られた方もいると思います。
その中で、心理支援として「傾聴ボランティア」の方もたくさんいました。
私たち心理支援のボランティアにも原則として持っていなければならない考え方があります。
それは「B P S モデル」という考え方です。
BPSモデルとは
「生物(バイオ)・心理(サイコ)・社会(ソーシャル)」のことで、健康や病気・疾患の理解において、どれか一つだけに偏ることなくそれぞれの相互作用を検討するとらえ方です。
● 支えることは支えられること
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心理支援をする方の多くは、このことを理解しているはずですが、なかには心理面だけを優先しようとして、被災者だけでなく自分自身も傷ついてしまうケースもあります。
まず最優先にされるべきは、「生物(バイオ)」。
つまり、命を守ることであり、それが十分ではない間は心理的なサポートよりも優先されなければなりません。
また、社会的なサポートとして、
行政、福祉などとの連携も不可欠であり、どれか一つに偏ってはいけないし、それぞれの相互作用を重視していかなければならないのです。
さらに、「支援する」という意識が、
ときに弱者を支えるという意味合いにおいて、どうしても上下の関係に見えてしまうこともあります。
「助ける側」と「助けられる側」という区別を生み出してしまうのです。
でも、支援活動は決して上下の関係ではないと、私は感じています。
被災地での活動をしていくと、
そこに見えてくる関係性は上下関係などではないことがよくわかります。
実際に現地でかかわりをしていくうちに、結果として私たち自身が癒され、救われる経験をすることが多々ありました。
誰かのサポートをするということは、巡り巡って、自分を支える大切な行為であることも忘れてはならないと強く感じます。
● イベントではなく継続すること
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2000年大みそかにあった世田谷一家殺害事件後の地域の子どもたちへのサポートは、約6か月。事件後の急性期のサポートをいったん完了した後に、アートができる場として10年以上毎月開催していました。
中越地震の際のサポートでは、
災害後の数か月を経て、その後もしばらくの間セラピストが通い続けました。
東日本大震災の際は、
やはり直後から半年間ほど継続した後に、継続支援として8年ほど続けていました。
今回の能登半島地震での支援活動がどんな形をとるのかはまだ明確にはなっていませんが、
単発のサポートではなく継続の場として検討を重ねていく予定です。
心のサポートは、長い年月を必要とします。
アートを使う私たちの支援スタイルでは、被災した方々に直接の言葉を求めることは多くはありません。
画材を置くスペースを作らせていただき、それで遊びたい人たちに集まっていただきます。
何かを作ったり描いたりするのをただただ見守ります。
話をしたければお話を聞きます。
アートセラピーは「素材のセラピー」と言われます。
クレヨンで線を描き、粘土をこね、あるいは詩を朗読したり歌を歌うと言った表現をすることを通して、こころとからだに調和が訪れてくるのです。
被災地の一日も早い復興と、皆様の安心と安全をお祈りしています。
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