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2024年8月

● マウンテンバイク

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グロースの3日目は、一番の山場。


マウンテンバイク30キロ、士幌高校での芋ほりと搾乳、子どもたちだけのカレー作り、そして最後はナイトハイク。


マウンテンバイクは子どもたちに大人気ですが、最初の4-5キロがかなりきつい下り坂が続きます。子どもたちがブレーキを握る手は次第に力が入らなくなり、制動が聞かず転倒してしまうこともよくあります。


出発前に、やるのかやらないのかを全員で相談します。


今回もあっという間にやることになりかけたのですが、ひとり決められないAちゃんがいました。昨年チャレンジしたのですが、残念ながら転倒して大けが。


今年のマウンテンバイクをどうするのか、グロースに参加する前から本人も悩みに悩んでいたようです。


● 本当はどうしたいのか

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グロースでは「君は本当はどうしたいの?」と問いかけます。


このときのAちゃんにも同じ問いかけをしました。


「怖いから乗りたくない」


「やりたいけど怖い」


「乗らずに軽トラに乗って応援する」


こんな回答が返ってきました。


でも、ボクが聞きたいのは、「本当はどうしたいのか?」ということ。


Aちゃんから聴こえてくるのは、


「本当は乗りたいのだけれども、怖くて仕方がないから乗りたくない」という声です。


本人が自覚しているかどうかは別。


乗りたくないことも、応援することも「したいこと」と言えばそうなのですが、「本当にしたいこと」とは違うように聴こえます。


● 躊躇すること

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私たちも、「本当はこうしたいけど、やっぱり無理だよなぁ」とあきらめてしまうことがあります。


こういったとき、私たちは「こうしたい」という自分の本当の声にどれだけ寄り添って尊重していると思いますか?


多くのケース、「無理」であることに寄り添って「したい」ことは封印されてしまいます。もちろんその方が安全だし、かえっていい結果につながることもあるかもしれません。


でもグロースで大事にしていることは、「自分の心の声を聴いてあげること」「気づいてあげること」なのです。


今回のAちゃんについて、全員で真剣に考えます。


「説得」や「誘導」はせずに、自分の気持ちや考えを伝えていきます。


いろいろな意見が出る中で、M君がこんな意見を言いました。


「Aちゃんの気持ちを尊重したい」


その発言をした子どもの、やさしさや思いやりが伝わります。


でも、ボクはM君の本当の声を聴きたかった。


「Mの気持ちはよく分かった。で、Mは自分は本当はどうしたいんだ?」


キョトンとした彼はしばらくうつむいて考えていました。


中学3年の彼は、この優しさゆえに日々葛藤している毎日を送っているのを知っています。


「人のため、誰かのため、の前に、『自分のために』本当の心の声を聴いてごらん」


彼はしばらく考えたのち、「やっぱり一緒に乗りたい」と答えていました。


グロースでは、まず「自分がどうしたいのか」に気づくことが大切なのです。


● やり遂げたAちゃん

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一時間以上、いやそれ以上の時間をかけて話し合い、さらにいろいろあって、Aちゃんは「やる!」と決めました。このプロセスも紹介したいのですがまた別の機会に。


Aちゃん、決めたのはいいのだけれど、出発前の練習でも恐怖で体ががちがち。


これでは安全に走れないと判断したボクは、Aちゃんの「やりたい!」という決断を尊重し、「急坂を終えたあたりの下り坂からスタートしてみるのはどうか?」と聞いてみました。


本人は、少しほっとした様子でうなづきました。


出発はグループごと。ボクは、別のグループの小2のH君につきっきりで降りていきました。H君は見事に下り坂を制覇し、元気に走り出しました。


Aちゃんは、というと。


グループはAちゃんに歩調を合わせ、声を掛け合い約1時間以上かけて休憩ポイントにやってきました。休憩場所で待っていたほかの子どもたち全員が出迎え手を振っています。


マウンテンバイクから降りてきたAちゃんは


「やったー、やったー」と大はしゃぎでボクの手を取り、走り回りました。


「恐怖を超えて決めたこと」が、どれほどのことだったのか、からだ全体でうれしさを表すAちゃんから伝わってきました。


● 自分はどうしたいのか?

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日々生きる中で、私たちは様々な選択をしています。


その選択もさほど重要でないものから、大きな決断をともなうものまで。


どうすればいいのか?といった、正しい結論や周囲への配慮から決めていくこともあるでしょう。でも、その前に「自分という存在」があります。


自分で決めるということは、自分だけで決めてひとりで生きて行け、ということではありません。


決めれば、それを実行するために次のステップとして周囲の同意を得たり、一緒にやるための作業が求められます。いわば「関係性の構築」です。


でも関係性を創ることを最優先にすることで、ときにいちばん大事な自分を心の奥底に置き去りにしてしまうことがあります。


やりたいことが全部できるわけではありません。


ただ、やりたいことに気づいていることはとても大切なことなのです。


今回も、子どもたちからたくさんの学びを得ました。


適切な場を与えてあげること、これが子どもたちの心を育てる大事な大人の役割だとつくづく感じています。


詳しい事は今月開催する「子どものためのWELL-BEINGゼミ」という公開ゼミでお話しします。


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